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新譜の感想 Ry Cooder "The Prodigal Son" (2018)

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 私が個人的に最も思い入れのあるギタリスト、ライ・クーダーのニューアルバムが発売されました。2011年、2012年に立て続けにオリジナルアルバムを出して、2013年には素晴らしいライブアルバムがありましたが、それから早5年。久しぶりの新譜です。

 ブルース、アメリカン・ミュージックの探求者であり、スライド・ギターの名手、オキナワ、キューバー、ハワイアンなどワールドミュージックの伝道者。「パリ、テキサス」や「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」などの映画関連の活動も有名です。ライ・クーダーの音楽的特徴は一言では書き表せませんが、とりあえずニューアルバム1曲目のスタジオライブ動画をリンクします。

  このゾクゾクするようなエレキギターのトーンは、ライ・クーダー唯一無二のものです。

 2曲目は沖縄民謡の雰囲気が漂うオリジナルソング。その他3曲目と10曲目がオリジナルで、あとは1940〜1960年代のトラディショナルソングを取り上げています。楽器のほとんどはライ・クーダーと息子のヨアキム・クーダー(ドラム・パーカッション)が演奏しています。

 4曲目と6曲目はライ・クーダーファンにはお馴染みのブラインド・ウィリー・ジョンソンのゴスペル・ソング。「パリ、テキサス」を思わせる、アコースティックなスライドギターを聴くことが出来ます。

 そして7曲目はファーストアルバムでも取り上げたアルフレッド・リードのナンバーで"you must unload"。同氏作の"How Can a Poor Man Stand Such Times and Live"をライブで演奏する時のような、ゆったりとした感涙のアレンジです。

 

 本アルバムのタイトルは"The Prodigal Son"。訳して「放蕩息子」。聖書の逸話が元になった歌だと思います。

放蕩息子のたとえ話 - Wikipedia

 放蕩の限りを尽くした末に酒場で聴いたスライド・ギターに救いを見出すタイトル曲。神様が、戦前にプロテスト・ソングを歌っていたウディ・ガスリーを側に呼んで、争いの絶えない今の世を悲観する、オリジナル曲の"Jesus and Woody"など。

 ゴスペル色の強いこのアルバムのメッセージを歌詞から読み解くのは、キリスト教をはじめ宗教的な逸話に全く疎い人間にとってちと難易度が高いのだけれど、近年の米国の政治や文化に対する批判的な暗喩になっているようです。

 

 最後に。今回ライナーノーツの冒頭には"TERRY EVANS 1937 - 2018"の文字が。

 ボビー・キングと共に長年ライ・クーダー・バンドのコーラスワークの一翼を担ってきた、テリー・エヴァンスが亡くなったようです。本作が彼の声を聴ける最後の作品になるのかもしれません。2013年のライブ盤で聴くことが出来る、彼の代表曲と言ってもよい"The Dark End Of The Street"は素晴らしかった。

 Spotifyで聴ける方はぜひぜひどうぞ。歌い出しがテリー・エヴァンスです。

open.spotify.com

The Prodigal Son

The Prodigal Son