blog in a bottle

音楽、本、映画などの私的メモ

街とその不確かな壁

あとがきを読んだ上での感想。この物語は村上春樹にとって3回目の書き直しなのだから、近年のコロナ禍そのものが主題ということは有り得ない。世界の終わりとほぼ同プロットの第一章に、書きたい事はおそらく全て書かれている。思い返せば自分はハードボイルド・ワンダーランドのパートの方が好きだった。停滞を望む自分と前進する影。これは自分の居場所を探し求める物語、と単純に解釈してよいのか分からない。かつて抱いていた「村上春樹は私の事を書いている」という気持ちが、自分の中から無くなってしまったようなので。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

息子を亡くし妻と別れ、失意と無気力の中で老後を過ごすインディ・ジョーンズ。そんなインディ・ジョーンズを見たくはなかった。今作はドラマもアクションも真面目すぎる。主役からチョイ役までネジが外れているのがこのシリーズの魅力ではなかったか。極めつけは、クライマックスで疲れ果てた表情で口にする「残りたい」という言葉。大好きなこのシリーズの最終章をいったいどう受け入れたら良いのか。ハリソン・フォードはイキで活力にあふれた冒険家ではなく、深く傷付いたキャラクターを演じたかったのだ。そう考えて気持ちの整理をつけようとしている。

君たちはどう生きるか

母親を亡くしていつも思い詰めてる少年が、アオサギを追いかけて、別世界に迷い込む。少年が自分を傷つけたのは何故。夏子さんは何故別世界に向かったの?考察する気持ちが起きないのは、あまり面白く感じられなかったから。大叔父様は宮崎駿。自分の作り上げた美しい世界を引き継ぐ者はなく、ジブリの世界は崩壊する。年老いたクリエイターは内省的な物語を好む。インディ・ジョーンズしかり。でも観客は、年老いたって情熱的な物語を望む。